ホリエモン氏が自己啓発書の中で唯一絶賛している本があります。
Newspicksの番組(THE UPDATE「起業家が成功する条件は何か?」)の中で「自分が十数年かけて築き上げた考え方が、まんまこの本には載っている」とまで言っています。
それが岸見一郎氏、古賀史健氏の『嫌われる勇気』です。
岸見一郎、古賀史健『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』ダイヤモンド社、2013年。
まさに「嫌われる勇気」を実践しているように見えるホリエモン氏が絶賛しているということは、この本の信ぴょう性を増しているように感じます。
ホリエモン氏はこの本のどういった点に共感したのでしょうか。
この記事では『嫌われる勇気』を要約するとともに、批判しうるポイントを整理します。
『嫌われる勇気』の3つのポイント
・人はだれでも幸せになれる
・すべての問題は人間関係に起因する。
・「課題の分離」が人間関係を解決する入口であり、「共同体感覚」がゴールである。
アドラー心理学の用語
・目的論・・・今この時点の人の行動を説明する際に、過去の「原因」ではなく、いまの「目的」を重視する立場。
・ライフスタイル・・・人の性格や気質。アドラー心理学では不可変の物ではなく自らが選び取っているものと考える。
・優越性の追求・・・無力な状態から脱したいという人間の感情。アドラー心理学ではこれを人間に普遍的なものと考える。
・劣等コンプレックス・・・自分の劣等感を自己正当化に使っている状態。アドラー心理学は劣等感自体は否定しない。
・見かけの因果律・・・本来はなんの因果関係もないところに、あたかも重大な因果関係があるように考え、自己正当化すること。
・人生のタスク・・・アドラー心理学が掲げる人間のありかたの目標。たとえば行動面の目的としては「自立すること」「社会と調和すること」を掲げる。
・課題の分離・・・自分の課題と他人の課題を切り分け、他人の問題に踏み込まないようにする態度。
・共同体感覚・・・アドラー心理学が掲げる対人関係のゴール。他人を仲間だとみなし、「自分の居場所がある」と感じられる状態。
・自己受容・・・できない自分を受け入れ、前に進んでいくこと。
・他者信頼・・・無条件に他人を信頼すること。
・他者貢献・・・仲間である他者に対して、貢献しようとすること。
『嫌われる勇気』の要約
人はだれでも幸せになれるとはどういうことか
『嫌われる勇気』はアドラー心理学を哲学者と青年の対話形式で解説する入門書です。
アドラー心理学を一言で要約するなら「人はだれでも変われるし、幸福になれる」という心理学です。
その主張を行うアドラー心理学には2つの大前提があります。
ひとつは感情は行動を起こす原因ではなく、行動をする/しないという目的を達するための道具であるということです。
これは「目的論」と呼ばれます。
たとえば、「トラウマがあるためにその人はある行動をできない」という言い方が一般的になされるかと思います。
アドラー心理学はそういった「トラウマ」観を否定します。
逆に「行動しない」という目的が最初に合って、行動しないための道具として「過去のトラウマ」という感情が作り出されると考えます。
この考え方に基づくのであれば、人は感情や過去に囚われるということがなくなり、今なんでも自由にできるということになります
つまり、アドラー心理学に基づくならば「人はだれでも変われる」のです。
すべての問題は人間関係に起因する
アドラー心理学のふたつめの前提は、全ての悩みは人間関係に起因するという前提です。
たとえば、経済的な悩みも究極的にはどう「相手のニーズに合ったものを差し出せるか」「どう交渉を有利に進めるか」という人間関係の問題に還元できます。
孤独という一見個人の問題と思われる問題も、「普通なら他の人とうまく付き合っていけるはずなのに、自分はできない」というように社会・他者が存在しているからこそ生じます。
では、アドラー心理学ではどういった人間関係を構築することができれば幸せになれると考えるのでしょうか。
善い人間関係をつくるためには
アドラー心理学では、良好な人間関係の入り口を「課題の分離」、ゴールを「共同体感覚」と考えます。
人が人間関係で悩むのは何故でしょうか。
それは、自分ではどうしようもない他人の問題を自分の問題だと錯覚するからです。
例えば、会社の会議で自分の意見を主張するかどうか迷う人を考えてみましょう。
その人は、自分の主張に対して周囲がどう思うかという自分ではどうしようもない問題に頭を悩ませています。
そこでアドラー心理学では自分の課題と他人の課題を切り分け、自分の課題のみに集中することを求めます。
もちろん、他人のどう思われるかを気にせず行動するというのには心理的な抵抗が伴うかと思います。
それを押し切るには「嫌われる勇気」が必要になります。
「嫌われる勇気」さえ持つことが出来れば、人は自由に行動できるようになり、自分の能力に自信を持つことが出来ます。
また、課題の分離で自分にできることには限界をあることを知れば、不要な思い煩いから解放されるとともに、今の自分を受け入れることができるようになります(自己受容)。
この「課題の分離」ができれば、自分の信頼に対して相手が応えるかどうかが他人の問題に属する問題だと分かり、自分はただ相手を信頼することに集中することが出来ます(他者信頼)。
他人を信頼することが出来れば、他人は「仲間」になり、その他人に貢献することに積極的になれます(他者貢献)。
そうすれば、自分は仲間に貢献しているという感覚(共同体感覚)が芽生え、さらに自己受容できるという正のループに入ることになります。
アドラー心理学ではこのループに入っていることを「幸福」と定義し、人間関係のゴールと考えます。
『嫌われる勇気』の批判しうるポイント
「決定論」ではなく「目的論」が採用されている理由として、科学的根拠は(少なくともこの本では)提示されておらず、前提とされています。
つまり、「目的論」というのは「価値観」、悪く言えば「心の持ちよう」に過ぎません。
なので、うまくその「心の持ちよう」がハマれば、未来を切り開いたり、自分を変えたりということが可能でしょう。
しかし、それは本当に困っていて、精神的にきつい人に対しても「お前の心の持ちようが悪い!」というマッチョな根性論的な態度を提示してしまう可能性もあります。
それは、窮地に置かれている人をさらに追い詰めることになることにもなりかねません。
そういった問題点・副作用は読むうえで認識しておく必要はあるかと思います。
結局『嫌われる勇気』で述べているロジックや価値観自体は多くの人が納得するところだと思いますので、「理屈ではわかるけど感情が…」という問題をどう対処するかという「実践の問題」が最終的には残ります。
本文中でもそういった問題には自覚的で、アドラー心理学をほんとうに理解して生き方を変えられるようになるには、「それまで生きてきた年数の半分」がかかると述べています。
なので、どう体感レベルまで落としていくかには工夫が必要ですし、長い時間を耐えるだけの知恵が必要になります。
例えば、その「生き方を変える」実践の部分を詳細化した本としては、千葉雅也氏の『勉強の哲学』が参考になるかと思います。
『嫌われる勇気』の名言
いまのあなたが不幸なのは自らの手で「不幸であること」を選んだからなのです。
ライフスタイルを変えようとするとき、われわれは大きな〝勇気〟を試されます。変わることで生まれる「不安」と、変わらないことでつきまとう「不満」。きっとあなたは後者を選択されたのでしょう。
「他者に貢献するのだ」という導きの星さえ見失わなければ、迷うことはないし、なにをしてもいい。
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