皆さんの仕事は今後も安泰でしょうか。
給料は満足がいくほど上がっていますでしょうか。
もしこれらの質問に自信をもって答えることができないとすれば、仕事の選択ややり方において、ある3つのタブーをおかしているからかもしれません。
激動の時代を生き抜くために必要な能力を考えるために、この記事ではダニエル・ピンク『ハイコンセプト』の要約と解説を行います。
ダニエル・ピンク『ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代』三笠書房、2006年。
ダニエル・ピンク『ハイ・コンセプト』の3つのポイント
・「第四の波」による社会の変革
・左脳型の能力から右脳型の能力へ
・ハイ・コンセプトとハイ・タッチが求められる「コンセプト型社会」
ダニエル・ピンク『ハイ・コンセプト』のひとこと要約
『ハイ・コンセプト』は社会のトレンドをとらえて、今後必要とされる能力を予言したビジネス書です。
筆者は「過剰な豊かさ」と「技術革新」と「グローバリゼーションの」三つの観点から分析し、論理・分析といった左脳型の能力の市場価値は今後ますます下がっていくと考えます。
その地盤沈下に抗うためには直観的・全体的思考を行う右脳型能力が必要だと主張します。
そして、その右脳型能力のキーとなる概念が「ハイ・コンセプト」と「ハイ・タッチ」です。
ダニエル・ピンク『ハイ・コンセプト』のじっくり解説
「第四の波」による社会の変革
現在の労働市場は3つの大きな変化によって、変革を迫られています。
そのため、我々労働者もまた、急速な変化と適応をいやおうなしに突き付けれらています。
適用できなければ、ジリジリと不利な状況に追い込まれていきます。
例えば、その一つの表れとして平均給与の低下があげられます。
(参考:厚生労働省「平均給与(実質)の推移(1年を通じて勤務した給与所得者)」)
では、こういった事態を引き起こしている3つの変化とは一体何なのでしょうか。
それはずばり、「過剰な豊かさ」、「グローバリゼーション」、「技術革新」です。
これらの変化の波が合わさり、「第一の波(農業社会)」、「第二の波(産業社会)」、「第三の波(情報化社会)」に続く、「第四の波」として、これまでの社会秩序を根本から塗り替えようとしています。
以下では3つの変化を詳細に見ていきます。
過剰な豊かさ
労働市場を襲う一つ目の波は「過剰な豊かさ」です。
先進国の社会はここ百年で驚くほど生活水準を向上させました。
経済格差こそあれ、貧困にあえいで食べていけないという人は少ないのではないでしょうか。
例えば日本では、コンビニに行けば100円前後でいつでもどこでも食料が手に入ります。
9割近くの国民がスマホでもち、情報にアクセスし、無料の娯楽を楽しんでいます。
(参考:総務省「ICTサービスの利用動向」)
安心便利快適な世界が広がっています。
その結果、人々の物質的なニーズは飽和状態になりました。
三種の神器として「テレビ・洗濯機・冷蔵庫」を求めていた時代と比べると、「別になくてもいいか」「今持っている奴で十分かな」という感覚を抱く人が圧倒的な多数になりました。
その結果、ただ「機能がよい」だけでは売れなったと筆者は主張します。
その代わり人々は「美しさや超越への欲求」といった新たな価値も求めるようになりました。
例えば、Apple製品がほかの機器と比較して売れているのは何故でしょうか。
カフェではmacbookしかテーブルの上にのせてはいけないような雰囲気さえあります。笑
性能だけで言えばもっと優れたものがいくらでもあります。
それでも、割高のAppleが売れているのはデザインやスティーブ・ジョブズのストーリーが「クール」だからです。
こうして市場の影響で、労働者にも「機能」だけではなく、「美しさや超越」といった付加価値を生み出す能力が求められるようになってきています。
グローバリゼーション
労働市場を襲う二つ目の波は「グローバリゼーション」です。
経済がグローバルした結果、東南アジアで生産できるものは東南アジアで、IT開発などインドでできるものはインドでというように、産業は人件費が安い地域へ移っていっています。
もしくは、そういった人件費に引きずられて、日本での賃金もそういった地域と綱引きをするようになりました。
リモートワークが普及した今はよりイメージしやすいのではないでしょうか。
ほとんど顔を合わせずメールやチャットでのみやり取りをする同僚が、日本にいてもインドにいても、どちらでもいいと肌で感じているのではないでしょうか。
その結果、現在のホワイトカラー労働者には、海外の安い働き手にはできないような新しい能力が求められるようになってきています。
例えば、単に決まった手順を処理するのではなく、人間関係を結ぶといったり、斬新な課題に問い組んだりといった能力です。
技術革新
労働市場を襲う三つ目の波は「技術革新」です。
具体的には、AIなどを用いたオートメーション化です。
これによってルーチン化されうる仕事、つまり一定の決まりのなかでの作業や反復性のある仕事は、コンピュータの方がうまくできる可能性が高くなりました。
例えば、2016年ディープマインドが作った囲碁AI『アルファ碁』は世界トップ棋士を打ち破りました。
この結果、労働者には処理能力よりも創造力、細かい部分にこだわるよりも大きな全体像を描く能力が求められるようになりました。
左脳型から右脳型へ
以上、「過剰な豊かさ」、「グローバリゼーション」、「技術革新」という3つの変化と、それに伴って労働市場で相対的に価値が低下している能力を見てきました。
それらの共通点をあげるとすると、それは「左脳型の能力」であるということです。
左脳は主に論理・分析といった処理を司ります。
つまり、ロジカルに追求していけば答えが得られる問題を解く能力が市場で飽和しているのです。
その結果、「美しさや超越」、「人間関係を結ぶ」、「斬新な課題に問い組む」、「創造力」にかかわる能力が市場において希少価値を持つようになりました。
それらは直観的・全体的思考を司る「右脳」によって制御されている能力です。
『ハイ・コンセプト』では右脳型の能力のコアを以下の二つの概念で説明しています。
■ハイコンセプト:
パターンやチャンスを見出す能力、芸術的で感情面に訴える美を生み出す能力、人を納得させる話のできる能力、一見ばらばらな概念を組み合わせて何か新しい構想や概念を生み出す能力
■ハイ・タッチ:
他人と共感する能力、人間関係の機微を感じ取る能力、自らに喜びを見出し、また、他の人々が喜びを見つける手助けをする能力、そしてごく日常的な出来事についてもその目的や意義を追求する能力
『ハイ・コンセプト』は、この2つの能力を細分化して以下の「6つの感性」として整理しています。
筆者はこれからの社会においても変わらず、大きな報酬を得て、社会的に重要な役割を果たしていくためにはこれらの能力を伸ばしていく必要があると主張します。
機能ではなく「デザイン」
これからの商品やサービスは、機能的に優れているだけでは不十分です。
美的な価値や感情に訴えかけるような要素が必要です。
議論よりは「物語」
情報が氾濫している現代の社会では、データを元にして議論をするだけでは人を動かせません。
相手の感情を動かす様な「物語」を作る必要があります。
個別よりも「全体の調和」
「産業の時代」や「情報化時代」では、仕事を細かく分解して分業体制を構築することで生産性を伸ばしてきました。
しかし、その細かく分けられたタスクは機械や海外の労働者と奪い合うことになりました。
では、どのようなタスクであれば競合せず、市場で価値を保っていられるのでしょうか。
それは細かく分ける大元の仕事を作り出す仕事です。
バラバラのものをひとまとめにする能力が求められています。
論理ではなく「共感」
論理処理は人よりもコンピュータの方が得意です。
しかし、感情がないコンピュータには「共感」を行うことはできません。
他人をうごかしているものは何か理解し、人間関係を築いて人を動かすことは、人間にしかできません。
まじめだけでなく「遊び心」
まじめということはつまり、目標を達成するために必要なことだけをするということです。
しかし、必要なことだけをやっていては、新しいものは生まれません。
新しいものは一見無駄に思われるものから生じるのです。
モノよりも生きがい
物質的に満ち足りた現代の社会においては、モノではなくコト、生きがいや自己実現を追い求めるようになりました。
精神的な充足を与えてくれるものが必要なのです。
ダニエル・ピンク『ハイ・コンセプト』の引用したくなる言葉・名言
アメリカ国内で心臓手術をすると5千万ドルかかるが、インドでやれば5千ドルですむ。それも成功確率は99.7%とアメリカでやるのと変わりはない。
読書した際にはぜひ読書会にご参加ください!
アウトプットすることで本の内容を記憶に定着させるとともに、考えたことをシェアしましょう!
お待ちしております!