橘玲『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』の要約と解説|成功する性格とは

spirit 本・書評

「こんな自分嫌だ!」

「性格を変えたい!」

「なんでこんな性格なんだろう」

そのように思ったことはありませんか?

何かで失敗した時などは、しばしば自分の性格に批判の矛先を向けたくなります。

そして、このようにも考えたことがあるのではないでしょうか。

「はたして性格はどこまで変えられるのだろうか」

「人生がうまくいく性格とは」

橘玲氏の『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』は、性格はどのように構成されているのかを説明し、変えられるものと変えられないものの境界線をクリアにしてくれます。

この記事では橘玲『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』の要約と解説を行います。

橘玲『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』幻冬舎、2021年。 

橘玲『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』の3つのポイント

・人格(パーソナリティ)は、遺伝や脳の神経物質などの無意識の領域から大きな影響をうけている。

・進化論の枠組みでは、特定のパーソナリティ・性格のパターンが存在しているのは、生存に有利な面が何かしらあるからだと説明できる。

・パーソナリティを変えることは可能だが、無意識に逆らうのは無理が生じるので、自分のパーソナリティを活かす方法を考えるほうがよい。

橘玲『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』のさっくり要約

『スピリチュアルズ』は進化論的見地から、人格の違いを説明しようと試みる著作です。

橘玲氏によれば人は無意識の領域から大きな影響を受けています。

ヒトは好ましいと思う状況に置かれたとき、ドーパミンなどの脳内化学物質がどばどばと脳内で放出されます。

それによって「快」という感覚を受けます。

そうすると、好ましいと思う状況に人は身を置くべく行動するようになります。

ただし、人によって脳内化学物質の強さやどのような時に放出されるのかの差異があります。

例えば、より強い刺激を受けなければドーパミンが放出されない人もいれば、少しの刺激でもドーパミンが放出される人もいます。

このような脳内の動きと行動の一定のパターンの差異が、人格の差として現れます。

より強い刺激を受けなければドーパミンが放出されない人は、強い刺激を追い求めるようになり、社交的・外向的な傾向を持ったパーソナリティになります。

筆者は進化論的見地から、現在正規分布的に存在するあらゆるパーソナリティは、生存に有利な側面を持っていると主張します。

例えば、現代社会においては一見不利になることが多いように思える「内向的」というパーソナリティも、「過度に刺激を追い求めない」=「リスクをとらない」というメリットがあるので、自然によって淘汰されず現代まで残っているというわけです。

それは現代でも同じで、例えば研究職やエンジニアなどの専門職であれば「内向的」はメリットとして働く場合が多いです。

そのため『スピリチュアルズ』では、人格を変えようとするという無意識に負荷をかける方法ではなく、自分のパーソナリティが生きる場所を探す戦略を推奨しています。

橘玲『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』のじっくり解説

『スピリチュアルズ』では、パーソナリティ心理学ビッグファイブという枠組みを元にして、パーソナリティを分析しています。

パーソナリティ心理学によると人の性格は、「外向的/内向的」「楽観的/悲観的」「協調性」「堅実性」「経験への開放性」5つの基本的な要素に還元できます。

橘玲氏は「協調性」をさらに「同調性」「共感性」の2つに細分化しています。

以下では、「外向的/内向的」「楽観的/悲観的」「同調性」「共感性」「堅実性」「経験への開放性」の6つのパーソナリティの要素のそれぞれを、『スピリチュアルズ』における理解に基づいてまとめます。

外向的/内向的

sociable

外向的/内向的の違いにはドーパミンと呼ばれる脳内快楽物質が関係しています。

ドーパミンが脳内に放出されると中枢神経が覚醒します。

その覚醒度合いが最適値に近づけば近づくほど、人は「快」という感覚を受けます。

なので、人はドーパミンが最適値まで放出されるような刺激を追い求めるようになります。

つまり、ドーパミンは「なにかを獲得したい」という感情の源であり、「欲動/衝動」を生じさるのです。

「欲動/衝動」は人を行動させるエンジンですので、ドーパミンの最適値が高い人ほど積極的に行動するようになり、外向的なパーソナリティになります。

楽観的/悲観的

positive

楽観的/悲観的の違いにはセロトニン等の脳内物質が関係する、損失系と呼ばれる脳のシステムが関係していると筆者は主張します。

損失系とは「ネガティブな刺激に対する神経の覚醒度」であり、「シミュレーションがネガティブに向かう傾向」をつかさどります。

シミュレーションがポジティブの方向に傾いているひとは、楽観的というパーソナリティになり、精神が安定する傾向があります。

このように表現すると「悲観的」にはメリットがないように思えるかもしれませんが、進化論的りかいではデメリットしかない性質が淘汰されずに残っているはずがありません。

筆者は楽観的/悲観的の本質とは「刺激への敏感さ」だと主張します。

楽観的=鈍感で悲観的=敏感というわけです。

なので、「悲観的」な人はネガティブな刺激に対して過敏に反応してしまう一方で、ポジティブな刺激に対してはそこからより大きい精神的利益を引き出せるのです。

同調性と共感性

empathy

筆者は同調性と共感性の二つを明確に区分しています。

同調性は集団の圧力に対する反応の仕方で、共感性は相手に生じた感情を自分にも生じさせる能力です。

同調圧力にはすぐに屈するのに人の気持ちがわからない人を思い浮かべれば、同調性と共感性の違いが明らかになるかと思います。

面白いのは、同調性というパーソナリティは正規分布(平均に近づくにつれて数が多くなる)ではなく、べき分布(極端な値の数が多い)しているということです。
(正規分布とべき分布の参考:リスク管理Navi『べき分布』 )

筆者はこれを、人間が社会の中で生きていく以上同調性は必須の能力であるからだと説明します。

同調性がないものは集団で生きることが出来ずに生存的に不利になったため、個体数が低く抑えられたから正規分布しなかったというわけです。

一方で共感性は高い人と低い人が正規分布しています。

筆者の理解では共感性は高くても低くても、生存において有利になるケースがあるということです。

なんとなく共感性が高い方が社会の中でうまくやっていけそうに思いますが、必ずしもそうとは限らないと筆者は主張します。

例えば、企業の経営者や軍の指導者などのリーダーは共感性の低さが有利になるケースです。

企業のためにリストラなどの非情な決断をしなければならない時があります。

社員に共感性を発揮していたら、その意思決定に支障が出ます。

堅実性

effort

堅実性は衝動を抑制できる能力です。

この能力によってひとは計画を立てて行動できるようになります。

これは、将来の価値をどのように見積もるのかということとも関係しています。

将来の価値を大きく見積もる人は、目の前の快楽を優先せず、将来のために備えるように行動します。

逆に将来の価値を低く見積もる人は、目の前の快楽を我慢しません。

明日どうなるかわからないような変化の激しい環境では、堅実に同じことを続けることは不利に働きます。

しかし、将来にたいしてある程度見通しがきく状況では、計画を立てて堅実に行動する戦略は有利に働きます。

また、堅実性は他のパーソナリティと比べて、思春期以降に能力の向上が期待できるパーソナリティだとも筆者は言います。

経験への開放性

adventure

経験への開放性は一般的に「新しいものへの好奇心」や「創造性」と言われますが、筆者は「意識というモニタの解像度のばらつき」と定義します。

簡単に言えば、ものごとをパターンに回収せずに見れるかどうかです。

ものごとをパターンに回収せずに見るひとは、同じような事象であっても細かな違いを見出せます。

そのため、物事をパターン化してみる人であれば飽きるような物事にも、好奇心を抱き続けることが出来ます。

また、ものごとをパターンに回収せずに見るひとは、世間一般のパターンとは違う枠組みで世の中を見ることが出来ます。

例えば、詩人の比喩は、通常の人が結び付けないもの同士を「まるで○○のようだ」と結びつけます。

もちろん「ものごとをパターンに回収して見る」にもメリットはあります。

全く同じ経験ではないことであっても、「これは前に起きたことと同じパターンだ」と気づくことが出来れば、経験を応用して対処することが出来ます。

成功する性格とは

筆者は以上のビッグファイブ+αの組み合わせによって人々の性格を説明します。

例えば、仕事に継続的かつ情熱的に取り組み、目標達成にやりがいを感じ、競争を厭わない「モーレツ・ビジネスパーソン」であれば「高い外向性+悲観的+高い堅実性」という感じです。

また、元マッキンゼーの経営コンサルタントとして著名な勝間和代氏のビッグファイブは以下動画で紹介されています。

筆者は様々なビジネス書で推奨される行動パターンを要約し、現代の高度知識社会において「成功するパーソナリティ」として要求されるのは「高い堅実性」+「楽観的(精神的安定性)」に「高い知能」を合わせたパーソナリティだと述べます。

ただし、筆者はこうも言います。

現在のインターネット環境によって様々なニッチな市場ができてているので、自分の性格があっている市場も必ず存在する。

無理にパーソナリティを変えようとして、無意識に負荷をかけるよりも、自分に合ったニッチを探す方がいい、と。

引用したくなる印象的な表現

「外向的/内向的」や「楽観的/悲観的」が正規分布するのに対して、同調性のばらつきはベキ分布するのだ。

重大な決断を迫られる組織のトップには、共感力の低いリーダーがふさわしいのだ。

知能の遺伝率は年齢とともに上昇し、思春期以降は70%程度まで達する。

 

 



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