「読書会レポート」は、東京ワタコレ読書会で紹介された本をピックアップし、アーカイブしていくコーナーになります。
本の内容や感想に限らず読書会での話題なども合わせて紹介しているので、読書会レポートを読んでいると、まるで読書会の場にいるような感じがしてくるかと思います!
書評としても、読書会の様子を知るレポートとしてもお読みいただけます!
今回は2022/9/10に開催されたリアル会場回で紹介された本からのピックアップです!
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ピエトラ・リボリ『あなたのTシャツはどこから来たのか?』の概要と感想【読書会レポート#52】
【読書会レポート#52】紹介された本のピックアップ:ピエトラ・リボリ『あなたのTシャツはどこから来たのか?』
ピエトラ・リボリ『あなたのTシャツはどこから来たのか?』東洋経済新報社、2006年。
ピエトラ・リボリ『あなたのTシャツはどこから来たのか?』の概要
1枚6ドルのTシャツが自分の手元に届くまでの顛末をたどることで読者をグローバル経済の世界へと誘うドキュメンタリー。グローバル化に対する一般的な通説を覆す。
(参照:Amazon紹介文)
ピエトラ・リボリ『あなたのTシャツはどこから来たのか?』の目次
【第一部】キング・コットン──二〇〇年にわたる米国綿産業の覇権
第1章 テキサス州ラボック ラインシュ綿農園
第2章 米国綿の歴史──勝利の鍵は労働市場の回避
第3章 ラインシュ農園ふたたび──「怖いのは補助金だけじゃない」
【第二部】メイド・イン・チャイナ
第4章 綿、中国へ上陸
第5章 底辺へ向かう長い競争
第6章 女工今昔物語──農場から搾取工場へ、そして……
【第三部】もう一つの国境問題──アメリカに帰るわたしのTシャツ
第7章 怒声の合唱──政治が貿易を支配する理由
第8章 保護貿易政策の意外な結末
第9章 四〇年の暫定的保護の終焉
【第四部】本物の市場原理──ついに自由貿易に向かうわたしのTシャツ
第10章 中古Tシャツの行方──日本、タンザニア、そしてボロ切れ工場
第11章 零細企業と東アフリカとアメリカンTシャツ
ピエトラ・リボリ『あなたのTシャツはどこから来たのか?』に対する紹介者Hさんの感想・観点・印象に残った箇所
・本書では四つのプロセスに分かれて、Tシャツが生産されて消費者に届く流れが説明されています。原料、生産、輸出、中古輸出の四段階です。
・「原料」のプロセスが行われるのは、東南アジアとかを思い浮かべるかもしれませんが、意外なことにアメリカです。
・「生産」のプロセスが行われるのは、イメージ通りアジアの労働力が安い地域です。
・「輸出」のプロセスで、アメリカなどの消費地に再輸出されます。
・そして最終的に、「中古輸出」でアフリカなどの国に輸出されます。
・しばしば多国籍メジャー企業に対して、発展途上国の労働者を搾取されるという批判がされますが、この筆者はそういった労働者も、農村での労働よりも、休憩時間や週一の休暇があったりと労働環境はずっとましなので、一概に搾取と批判できないのではないかといっています。
・関税をかける保護貿易もしばしば批判の対象となりますが、輸入先のバランスを取ることにつながっているので、一概に輸入元の国に悪い話ばかりではないと主張しています。
ピエトラ・リボリ『あなたのTシャツはどこから来たのか?』について読書会で話題になったこと・感想

こういったグローバルな製品生産に関する議論は、多国籍企業の搾取批判が多い気がしますので、筆者の観点は新鮮でした。

そうですよね。私も珍しいなと思いました。

今って、この生産の地域も人件費の変化に伴って中国じゃなくなってきてますよね。バングラデシュとかが多いイメージです。

そうですよね。日本も賃金がOECD加盟国で唯一横ばいであることがしばしば、指摘されていますが、日本が再び生産地になったりすることはないのでしょうか。

産業によっては現に起こっていますよ。例えば、アニメの制作とかは、中国とかよりも日本の方が安くつくのでこっちで作っているとか。
ピエトラ・リボリ『あなたのTシャツはどこから来たのか?』に対する投稿者の感想・補足
多国籍メジャー企業が生産地に与えるメリットという観点は興味深かったです。
ただ、気になる観点が2つあります。
一つは、「農村より工場の方がまし」といっても、それは発展途上国内での相対的な比較。先進国はまた別の「豊か」の指標を持っているはずで、その視点に立てば、工場の労働環境は「劣悪」といえる。自分たちにとって劣悪なものを「今までやっていたものよりましだろう」と押し付けるのはどうかという「倫理的な問題」。
もう一つは、「農村より工場の方がまし」というときの指標が、先進国的な労働時間の観点から述べられているということ。「農村」における労働は家族を単位とした共同体によって担われており、その共同体から得られるメリット(非貨幣的な交換、帰属、機械的ではない自然のサイクルに合わせたライフスタイル)は、決してその指標では計算できず、工場労働になることで失われるものが正確に捕捉されていないという「評価指標の問題」。
単純な結論を出すことが難しい問題なので、様々な視点からの情報を得たうえで考えていきたいですね。
読書会(9/10)の様子
読書会の参加者
今回は67名の方にご参加いただき、9テーブルに分かれて読書会を行いました。
ご参加いただいた方はありがとうございました!
ピエトラ・リボリ『あなたのTシャツはどこから来たのか?』以外で紹介された本
9/10の読書会では、ピエトラ・リボリ『あなたのTシャツはどこから来たのか?』以外の本もたくさん紹介されました!
その一部をご紹介いたします!
今回は様々なジャンルの本がバランスよく紹介されていた印象です!
読書した際にはぜひ読書会にご参加ください!
アウトプットすることで本の内容を記憶に定着させるとともに、考えたことをシェアしましょう!
お待ちしております!